会長挨拶

会長就任にあたって


 この度、前期の木立真直会長のあとを引き継ぎ第15期の会長に就任いたしました。本学会の前身であるフードシステム研究会が1994年に設立されていますので、まもなく30周年を迎えることになります。この間、学際的な研究の推進、産官学の連携などを通じ、本学会は我が国におけるフードシステム研究の推進に大きな役割を果たしてきました。先達によって築かれた実績を継承し、会員の皆様、理事や事務局の皆様とともにさらに発展させていく所存ですのでよろしくお願いします。

 2020年初頭より世界を襲ったコロナ禍は現在にいたるも終息せず、社会に大きな混乱を与え続けています。本学会では、コロナ禍がフードシステムに及ぼした影響を解明することを最重要の課題として位置づけ、2020年度および2021年度の大会シンポジウムのテーマとして取り上げるなど、精力的に取り組んでまいりました。また、学会誌「フードシステム研究」においても、コロナ禍を研究テーマとした多くの論考が公表されています。今後はこれらの研究成果を社会に還元していくとともに、ポスト・コロナを見据えながらフードシステムの危機対応について本質的な議論を進めていくことを学会として後押ししていきたいと考えています。

 コロナ禍は学会活動、研究活動にも大きな影響を与えています。2020年より大会、秋期研究会の対面での開催を見送っております。当初は開催自体も危ぶまれましたが、開催校や情報・オンライン支援委員会の皆様のご尽力により、オンライン開催へと漕ぎつけることができました。しかし、会員同士のコミュニケーションの機会はコロナ以前と比べると大幅に減少しており、学会の円滑な運営の妨げになるのではないかと危惧しています。また、感染予防の観点から調査、資料収集、現場との交流がしづらい状況が続いており、現場に根ざした研究活動の阻害要因となっている可能性があります。感染状況はいまだに不透明な状況にありますが、可能なかぎり会員相互の連携をはかりながら学会活動を正常化し、研究の活性化を推進していくことが今期執行部に課せられた課題だと考えております。

 本学会の強みのひとつは「多様性」にあると思います。さまざまな研究分野に基礎をおき、異なったバックグラウンドを持つ人々が交流することが、ユニークな研究の源泉になっているのではないでしょうか。多様性を包摂できるしっかりとした基盤を構築することを目指して2年間の責務を果たしたく存じます。

第15期 日本フードシステム学会会長 茂野隆一(筑波大学)